「海難1890」は第39回日本アカデミー賞で2部門の最優秀賞を受賞いたしました!これからも「特定非営利活動法人 エルトゥールルが世界を救う」は、トルコと日本の時空と民族を越えた相互協力の精神をテーマとした映画製作を通して、アジアから世界平和へのアピールを発信しています。

第8話 『砲弾の下をくぐる日々』

2012年2月12日 高星輝次

「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」という幕末の狂歌がありますが、3月12日未明の首都空襲は私たちの生活を一変させた。

私の住んでいるアパートは市の北部の高級住宅街にあった。そう遠くないところに最高指導者ホメイニ師の住居もあるというエリアである。

イラク空軍機は国境防衛の手薄なイラン北西部からイランに侵入し、標高4000mのエルブルズ山脈を越えると一気に急降下しエルブルズ山脈の裾野にあるホメイニ師の住居を狙っているとの情報ももたらされた。つまり、私のアパートのある辺りは一番流れ弾が飛んでくる可能性が高い場所という事となる。

当時のイランの2階建3階建て程度の建物はレンガ作りである。床も壁もレンガを積み上げて作っていた。出来上がった建物はレンガの上にモルタルを塗って仕上げ塗装もしてあり綺麗な仕上がりになってはいるものの所詮はレンガの家である。20畳ほどのリビングルームの真ん中に立ち、ぴょんとジャンプし、静かにしていると床が上下にゆさゆさと揺れているのがわかる構造である。

こんな建物にロケット弾が着弾しようものならそれこそひとたまりもないこととなるのである。実際N商社の方が空襲の後で様子を見に行き小高くレンガのガレキが積まれている場所に立ち、周囲の被害状況を見ていたら、「おまえが立っているところが攻撃によって崩れ落ちた建物のところだよ」と教えられたという。

私たちはN商社の計らいで、北部の高級住宅街から市内の地下室のあるラマティアホテルに住まいを移した。そして昼は航空券を求めて商社の方と一緒に歩きまわり、夜は身を寄せ合って無事を祈る日々となったのである。

イランエアーは日本航空と共同運航の形をとっていたので、日本航空の事務所はイランエアーと同じ場所にあった。「なぜ日本航空は日本人のために飛行機を飛ばしてくれないのか」と日本航空のイラン人スタッフに詰め寄ったところ「それはお前たち日本人の問題だ、ここにはもう日本人スタッフはいない」と追い払われた。 万一の為に購入しておいたオープンチケットも、自国民優先で数少ない便に乗せて脱出していく欧州系の航空会社の前には何の効力もなかった。

そんな中、スエーデンのボルボ社の従業員たちが陸路バスで脱出するので同じ自動車会社のよしみで乗せてくれるという話がもたらされた。陸路での移動はゲリラや盗賊がいるという山岳地帯を越えて行くという危険が伴うこととなる。メンバーを集めてどうするか話し合った。「ここにじっとしていても埒があかない、陸路脱出に賭けよう」というのがメンバーの結論であった。

夕方になって、明日の陸路脱出に向け、N商社の社用車でいったんアパートに身の周りの物を取りに戻った。その最中に再び爆撃が始まった。4輪駆動車の窓ガラスが割れそうな勢いで爆撃音の振動が伝わってくる。ドライバーのババイ君は「ネミシェ ネミシェ(できない、無理だ)」を連発する。「いいから進め」とババイ君を叱咤激励しアパートに戻った。

翌日、一縷の望みを持ってボルボの指定する場所に私たちは立っていた。そして私たちに言われた言葉は「あなたたちはこのバスに乗って行っても国境を超えることはできない」という現実であった。ボルボの人たちは事前に陸路国境を超える手続きをしていたようであった。

落胆してホテルに戻るのは本当に取り残されていっているという現実をひしひしと感じさせた。その夜も空襲警報が鳴り響き、迎撃する高射砲の花火の様な音と光が私たちの避難しているホテルの窓から見えていた。

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軟禁状態のホテルにて陣中見舞いに来たパートナー会社の社長と

こちらの記事は、トルコ・イタリア・ポルトガル雑貨のオンラインショップ「JUNPERIAL SHOP」様がホームページで掲載されている、『イラン・イラク戦争 奇跡の救出劇「~日本・トルコ友情物語~ -高星輝次さん編-」』から、店主のJUNKO様のご厚意により転載させていただいているものです。

人々の物語

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