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第10話 『在日トルコ共和国大使館で初めてトルコの人に直接お礼が言えた』

2012年5月6日 沼田凖一

エルトゥールル号遭難事故の事を知って、何としてもトルコの人に直接お礼を言いたいという気持ちを抑える事が出来なくなり、在日トルコ共和国大使館に連絡を取らせてもらいました。 私の様に全くトルコに友人も知人も居ない一個人が連絡を取っても、相手にされないか、応対してくれても誰かの紹介を求められると考えていました。

しかし、私が想像していた事とは全く違って、私の簡単な自己紹介と1985年にトルコ航空で助けられた日本人であることをお伝えしただけなのに、数日後の12月10日に大使館に来て頂ければ参事官が会いたいという事で、その日に大使館に来られるかどうかという事でした。 考えられない事です、勿論私は即座に返事をさせて頂きました。会って頂けるだけでも私にとっては大変有難い事なのに、大使館に招いて頂けるという、これ以上の嬉しい事は有りません。

私にとって外国の大使館を訪問する事は初めての経験なのでどの様な事を準備すれば良いのか判りませんでした。私が考えている外国の大使館は門を一歩入ればそこは外国、だから当然その門を通れば外国に足を踏み入れる事なので、厳重なチェックが有るだろう、少なくともパスポートチェックは必要だろうし、その他にも自分の身分を証明する物が必要であろう、例えば、写真が入っている自動車運転免許証とか健康保険証、しかし、大使館に確認したところその様なものは全く必要無くただ正門を入ってセキュリティー担当者にアポイントを頂いた参事官のお名前と自分の名前を告げれば良いと云う事でした。本当に驚きました、こんな事で大使館の安全が守れるのだろうかと私の方が心配する程簡単に入館させて頂けるとの事でした。

2008年12月10日、お約束の時間少し前にトルコ大使館に到着し入館しました。正門を入り、少し行った左手に大使館に入る入口が見えました。そこを入ったら、守衛室が有りましたので、事前に言われていた通りアポイントを頂いていた参事官のお名前と自分の名前を名乗りました。直ぐに大使館に入るオートロック扉のロックを外してくれて「どうぞ中へ」と促されて扉を開けて入りました。そこは大使館の敷地の中です。玄関を入って直ぐの所に受付が有りそこに日本人の女性が訪問者の対応をしています。

訪問者記入リストに記入し、ロビーの椅子で待たせてもらいました。待っていると間もなく右手の扉から女性が出て来て参事官室に案内してくれました。参事官は待っていてくれて、私が入って行くと直ぐに立ち上がり握手を求めて来ました。握手をしながら名前を告げお時間を取って頂いた事にお礼を言うと、接客用ソファーをすすめられました。参事官と私がテーブルを挟み座り、秘書の方は私の隣に座ってくれました。

早速、25年前テヘランからトルコ航空で助けてもらった事を手短に話し、心からのお礼を言いました。秘書の方がトルコ語に訳してくれて私の気持ちが直接参事官に伝わり、逆に参事官からわざわざ感謝を言う為に来た事にお礼を言われてしまいました。

暫く、25年前のその時の状況などを話した後、1999年8月のトルコ北西部大震災の復興状況をお聞きし、復興支援の募金を申し出ましたら、トルコ政府としては義捐金の受付は既に終了していて、折角の申し出ですが、お受け出来ませんとの事でした。それではそれに関する事で寄付をする事が出来ないものかお聞きしましたら、兵庫県のある団体が活動をされている事を教えてくれました。具体的な名前は判らないという事でしたのでお時間を取らせた事へのお詫びとお礼をして大使館を後にしました。

25年経ってやっとトルコの方に直接お礼が言えた瞬間でした。私は何と幸運なんだろう、こうやって直接トルコの方にお礼が言える日が有るとは考えてもいませんでした。

こちらの記事は、トルコ・イタリア・ポルトガル雑貨のオンラインショップ「JUNPERIAL SHOP」様がホームページで掲載されている、『イラン・イラク戦争 奇跡の救出劇「~日本・トルコ友情物語~ -沼田凖一さん編-」』から、店主のJUNKO様のご厚意により転載させていただいているものです。

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