2011年10月9日 沼田凖一
テヘラン・メヘラバード空港を飛び立ちホッとしました。しかし、何時イラクが空爆をして来るか判らないのです。空軍が勝手に航空機撃墜をするかも知れないし、イラク・フセインの気が変わって攻撃して来ないとも限りません。何しろイラクにはアメリカもソ連も後ろ盾になっているのだから怖いものは無いのです。
機内はシーンと静まり返って話声もしない。何時撃墜されるか判らない、そんな恐怖で身体を強ばらせて身動きもしませんでした。どれ位の時間が経ったのだろう、私にはとてつもなく長く感じられました。その時、機長の機内アナウンスが響き渡りました。「WELCOME TO TURKEY」次の瞬間、機内に「わあっ」という歓喜の叫びと、大きな拍手とが起こりました。
この時ほど生きている事の喜びを感じた事は有りませんでした。「ああ、これで助かった」これ迄凍りついていた血が身体中を駆けめぐりました。そして涙が止めどなく溢れて来ました。周りの人達も皆泣いています。一緒に脱出して来た仲間も皆おそらく泣いていたでしょう。今、私達はトルコ航空機の中にいるそして、まぎれも無く生きているのです。 こうして、仲間は誰一人戦争の犠牲に成らずに無事日本に帰れるのです、良かった、本当に良かった。言葉では言い表せない安堵の気持ちがこみ上げて来てホッとしている自分がそこにいました。
イスタンブール・アタチュルク空港に到着し、ここでもまた、タラップをどうやって降りたのか、到着ロビーまでどうやっていたのか覚えていません。到着ロビーの荷物受け取り場に降りる階段の上に立った時、ものすごい閃光が走り、その光の多さに驚き一瞬足がすくみました。その光の方を良く見ると、大勢の人がカメラで私達の方を撮っていたのでした。
涙でかすむ 階段を一歩一歩降り乍ら、「ああ、私達はこの国の人達に助けられたんだ」「私達の無事を喜んでくれているんだ」有難う、本当に有難うと心の中で繰り返しながら荷物受け取り場に降りて行きました。 荷物を受け取り、ロビーに出ると日本の商社の皆さんや大勢の関係者の方が我々の乗るバスに案内してくれました。
バスに乗っても今自分がどうなているのか判らないでいるとホテルの玄関前に停まってくれました。ホテルに着いたので直ぐにチェックインし、部屋に荷物を置いたらレストランに集合するよう確認し、各々の部屋に行きました。荷物の重さは全く感じませんでした。